雰囲気は良いが設定無視が多いアニメ”よふかしのうた”

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私の好きな漫画に”よふかしのうた”という作品がある。ざっくり言えば、夜更かしな中学生が吸血鬼に出会い、自分も吸血鬼になろうとするラブコメバトル漫画だ。

主役の吸血鬼ナズナにそっくりな友人達がいるし、私自身も水商売経験があったり、(外にはたまにしか出なかったが)中学の頃から深夜にFF14というオンラインゲームに入り浸るような人間だったので、強い新規感を抱いて読んでいる。今では完全に夜型生活で、定期的に深夜散歩もしている。

 

で、そんな漫画のアニメ版が終わったことをふと思い出して見始めた。アニメは終わってから一気に見る派なのだ。

原作ファンからすると80点といったところで、雰囲気はよく再現されていてすごく良いのだが、重大な設定無視がしばしばあり、そこが気になっていまいち集中できなかったのが残念。原作を知らずにアニメだけ見る分にはほぼ気にならないと思う。

あとプライベートの先生に会うとことか、カットされたエピソードがあったのもちょっと残念。本筋に関わらないから尺の都合で仕方ないんだろうけどねぇ。

 

ググっても意外とこの件に言及しているサイトが見つからなかったので、アニメしか見てない人の一助に慣ればと思い、気になった点のメモを残しておく。

比較のため、記事中ではしばしば原作漫画とアニメから画像を引用している。

全話 空の色

アニメ版では空が紫に描かれることが多い。原作では青あるいは彩度を大きく落とした色の落ち着いた夜だったため、紫に塗られたケバケバしい夜に拒絶反応を起こした。

とは言えこれはしばらく見てたら慣れた。媒体の違いの問題だろう。アニメで落ち着いた夜を描いてばかりでは動きがなくて飽きられるのかもしれない。

1話他 ナズナの家

1話でナズナの家の外観が登場し、その後の話でも度々出てくる。原作1夜(話)に比べると大幅にキレイになっており、廃雑居ビルとされる原作との乖離がすごい。何でもかんでもキレイにすれば良いってものではないのだ。

しかも、これは原作読者なら誰にでもわかる致命的なミスなのだが、明かりがついている部屋がある。この建物はナズナが(おそらく吸血鬼間の伝手で違法に)勝手に使っているだけで、他に誰も使用者はいないのだ。そうでないと後に倒壊するシーンとの整合性が取れなくなってしまう。

エレベータ内もだいぶキレイになっていて違和感がある。原作では描写が省略されただけと捉えてアニメ化されたようだが、明らかに壁や床が汚れているため、私はこれを省略ではなくオンボロビルの表現と見ている。

 

アニメ制作陣のフォローもしておくと、他の住人がいないと明かされたのは115夜、誰も使っていないことが明かされるのが123夜であり、これが掲載されたのはアニメ放送の5ヶ月前と2ヶ月前だ。ググったところによればアニメは放送の半年前くらいから作り始めることが多いそうなので、原作で言及された頃にはもう1話を作り終わっていて修正できなかった可能性が高い。

なのでここについてはアニメ制作陣というより、原作者のコトヤマ氏がしっかり監修しなかったことに落胆している。設定の共有などはなかったのだろうか。

またこの話が単行本として発売されたのは1話放送の1週間後である。単行本化されていない最新話まで追いかけろというのも酷な話かもしれない。

とはいえ窓の色を塗り替えるくらい後から出来なかったのだろうか。後の話で出てくるビルにも明かりがついている。

1話 ナズナ浮遊

公園でナズナが浮遊するシーンがある。
人外感を出したかったのだと思うが、この作品の吸血鬼に浮遊能力はないため、明確な矛盾だ。

原作3夜に相当するが、ここではアオリ構図のナズナがコマぶち抜きで全身描かれており、浮いているとも浮いていないとも取れる描写になっている。

その後のED曲が流れるシーンでもナズナが真横に飛行し、静止して滞空しており、原作と真っ向から矛盾する描写になっている。ED曲はこの漫画が作られるきっかけとなった原楽曲”よふかしのうた”であり、流れるタイミングとしてはとても良いのだが、描写の設定無視がひどすぎて私は全く楽しめなかった。残念。

原作通り大ジャンプするだけだとこの雰囲気を出すのは難しかったことはわかる。しかしいくらなんでも矛盾が大きすぎないだろうか。ちょっとした演出による改変の範囲とは認め難い。

 

ただしこちらも吸血鬼が大ジャンプしているだけと明確に言及されたのは112夜が始めてのはずで、これは半年前の掲載なのでアニメ反映が間に合わなかった可能性がある。

とは言え、3夜の時点でナズナが移動中に着地している描写はあるので、よく読めばわかったか、少なくとも疑問を抱いて原作者に確認することは出来たのでは? とも思う。

6話 壁抜け姿勢

アニメ6話、原作17夜でナズナが壁をすり抜けて出てくる場面。

単純に同じ画角で比べる分にはさほど違和感はない。ちゃんと測るとアニメのほうが若干ナズナの体が頭に比して長く、つまり体をあまり傾けてない姿勢になってはいるが。

特に気になったのは別の視点になったここ。原作だとこの視点はない。

前述の通り吸血鬼は浮遊できないし、隣の部屋に台座になる物はないので、この位置にナズナの腰があるのは変なのだ。原作では足元が写っていないためなんともいい難いが、アニメでは下まで写してしまったために位置が変なことが確定してしまった。

ちなみに透過する際に壁などの透過物に引っかかって浮くことも出来ない。透過するときは、その部位に関しては全てのものを透過するようになってしまう。

8話 オートセーブ付きPS1

アニメ8話、原作24夜に、コウがデートを断られた腹いせにナズナのゲーム機をスリープし、「最近のゲームはオートセーブあるから良かったもののこれがレトロゲームだったら大変だぞ!?」と怒られる場面がある。

見てわかるように、このゲーム機は明らかに任天堂スイッチを意識しており、オートセーブがあることに何も問題はない。またナズナの部屋には少なくともPS1とPS2も存在することがわかる。

26夜ではバーチャルボーイ/N64/ゲームキューブ/スーパーファミコン/Wii/ゲームボーイ/ゲームボーイミクロ/スイッチ/ピカチュウ万歩計?が布団の周りに描かれており、ナズナが任天堂とソニーについては概ね所持している重度のゲーマーであることが察せられる。

が、アニメだとPS1以外のゲーム機がないのだ。

この角度からではわかりにくいが、別視点からだと他のものが一切ないことがわかる。

PS1でダイヤ云々言ってるのは違和感があるし、仮に作画コストの都合で他のゲームを削ったのであれば、オートセーブに関する話は削るべきだっただろう。明らかにPS1を模したゲーム機の電源ボタンを押している。

この件に関しては後から公開された設定などではないため何も擁護できない。アニメ制作陣は何を考えてこれにOKを出したのだろうか。

9話 ダル男さん

原作だと”メンヘラさん”呼びだった人物が「メンヘラ化しちゃうやつがいる」「その言い方ダメらしいですよ」と1回言及された後は「最近ダル男が多くてさ」と続き、コウも”ダル男さん”呼びするようになってしまった。

たぶんテレビ放送のルールか何かに引っかかって仕方ないんだろうけど、準レギュラーキャラの名前が変わるのは残念。

13話 飛び降りるコウ

コウが歩道橋から飛び降りて無事に駆け抜けていた。原作ではおそらく追いかけてきたハツカを確認したために飛び降りていて、落下中ハツカに助けられるのだがその描写もなし。

ただ、少し先のネタバレになるがコウは吸血鬼化するため、この時点で既に吸血鬼化が始まっていたと考えれば辻褄は合わせられる。

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