DLsiteが虚偽DMCAに屈したとされる悪質なデマについて

この記事は約27分で読めます。

未だに誤解して新規ツイートする人が結構いてムカついたのでツッコミを書く。

免責。筆者は日本の知財法に関しては趣味でそこそこ追いかけているが、弁護士などではない個人である。またDMCAについては原文をざっと読んだことがある程度の知識しかない(判例などを読み込んでいない)。したがって誤情報を含んでいる可能性が否定できない。コメントなどで誤りを知り次第早急に修正するつもりだ。

概要

「DLSiteが虚偽DMCA攻撃に屈して出品取り下げにあったので販売停止します」という旨の記事をサークル”蜘蛛の巣ゲーム”がCi-enに投稿し、一部界隈で微バズする。SNS等で「DLsiteひどい!」との書き込みが多数なされる事態に。

しかし真面目に読むとサークルの主張には怪しい点も多く、掘り下げるとサークルには非常に不誠実な点が多々あり、DLsiteは悪くないと思われることが発覚。事件を拡散する記事にそれぞれ訂正コメントをする者たちが現れるも、コメントまでは読まない人によってDLsite悪者説が広まり続けている状態。

相手(DMCAに基づく取り下げ通知をしてきた)側はゲームのプログラマと同名で「サークルが報酬未払いで逃げたからだ」と主張しているが、それを見たはずのサークル側は理由を隠して「DMCA通知受けてDLsiteに出品停止食らった」という話だけ投稿。異論コメントがつくようになると記事を全消去して逃亡した。

つまり第三者による虚偽のDMCA攻撃を受けたのではなく、制作陣の内輪揉めが起きて、DLsiteは「権利問題が解決していない商品は取り扱えない」と(DMCAではなく)独自の判断と利用規約によって拒否したと思われる。

またそもそも「DLsiteが虚偽DMCA通知に屈した」というのはサークル主が勝手に主張しているだけであり、その主張にはしっかりした根拠が存在しない。

具体的内容は以下に書くが、裏付けが欲しい人以外は見なくても良い。だいぶ長くなる。

記事A 進捗#15+大事なお知らせ 魔王ちゃんとの生活

一旦書き終わってから存在に気づいた。後でこれを前提として全体を書き換える。

記事A 悲しいお知らせ

23年1月22日にサークルがCi-enで公開した記事。
https://ci-en.dlsite.com/creator/6468/article/785613
随時引用しながらツッコミを入れていきたい。

経緯説明

冒頭は

結論から、「ボトルバイオスフィア 家出少女との生活」は今後もDLsiteに取り扱いされないです

という話。

では事情を最初から説明させていただきます。
12月18日: 相手不明のDMCA申告をCuriosity Factory/DLsite側が受けました
12月19日: CFの指示によって作品の取り扱い停止
12月20日: 作品の所有権をCFから私に転移の申請をDLsiteに提出
1月20日: 転移が完了、しかし取り扱いは停止したまま
1月21日: DLsiteへの連絡と質問、結果的に取り扱いを拒否され
現在に至る

いきなり馴染みのないCuriosity Factory=CFという単語が出るが、これはアメリカのカリフォルニア州に本社を置くパブリッシャ(販売手続きの代行などを行う会社)である。公式サイトを見たほうがわかりやすい。

つまりサークルが直接DLsiteに出品していたのではなく、サークルがCFに委託し、CFがDLsiteと取引していたことになる。CFはアメリカの会社なので、アメリカの法律であるDMCAの制約を受け、CFにDMCA通知が出されればDMCAに従う必要があるだろう。12月19日の指示はそのためと思われる。

なおここでいう”DMCA通知”は、DMCAに基づいて「著作権侵害されているから撤回せよ」との通知を運営者へ送ることを指す。

DMCA通知を回避するためにCFへの委託を取りやめ、改めて直接DLsiteに出品しようとしたが拒否された、ということのようだ。これはDLsiteが日本の会社でありDMCAに従う必要がないため、中間のCFを排除したようにも見える。

日本企業はDMCAに従うのか?

まずはDMCA申告について簡単に説明させていただきます
DMCAはアメリカのデジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act)という法律です
自分の作品の著作権がネット上侵害された時にインターネットサービスプロバイダーに対して該当作品の取り扱いを停止させることができます
YouTubeまたはAmazonで動画や商品が削除された原因もこの法律です
アメリカの法律とは言え日本にいる企業は大体この法律を従えています

日本企業がDMCAに従っているという話は寡聞にして聞いたことがない。
DMCAのルール上、反論した元投稿者の住所氏名などを通知者に転送する必要があるが、日本の法律ではそのようなことは難しいと思われる。よってDMCAを遵守している日本企業は存在しないのではないだろうか。ただし最初の通知を日本のプロバイダ責任法に基づいて処理することは可能と思われる。

前提としてDMCAはアメリカの法律であるため、アメリカに拠点を置かない企業が従う必要は全くないのだ。

というか、そもそもDLsiteが受け取ったのがDMCA通知なのかがはっきりしない。少なくともDLsite側の発言スクショにはそのような言及はなく、単に侵害情報を知らされただけの可能性もある。かといって受けていない根拠もない。国の事情を考えずまとめて送信されていてもおかしくはないだろう。

DMCAの不当回避に動いた疑惑

当初はサークル主が無知なだけで、そういった誤解をしているのだと考えていた。ただ時系列を見ると、DMCA通知によって取り扱い停止になった翌日にCFを排除する処理をしているのである。日本企業もDMCAに従うと考えているのであればこの手続は特に意味がないもので、やる理由がよくわからない。
仮に、日本企業はDMCAを無視すると把握しているとすれば、DMCAに従う必要があるアメリカ企業のCFを排除したかったと説明がつく。確証があるわけではないが、だいぶ怪しい状況のように思える。しっかり理解した上で読者を騙そうとしていた可能性もあるのだ。

またDMCAという制度は、侵害があるとの通知を受ければ即座に投稿を消去する代わりに、投稿者から抗議があれば(通知者が訴訟を開始しない限り)2週間後には自動で復活する仕組みでもあるのだ。つまりサークル側は本来抗議して2週間待つだけで良いのだが、なぜか翌日にはCF排除に動いているのである。いかにも怪しいではないか。

蜘蛛の巣ゲームが主張するように通知内容が虚偽なのであれば、抗議した後に訴訟されることはない(虚偽の内容で訴訟しても即負けるので訴えてくるメリットがない)ので、送って待つだけなのだ。

抗議しない理由があるとしたら、「その訴えが虚偽でないことを知っていたから」以外にあるだろうか? 抗議通知を送ると自分の住所氏名等が相手に転送され、相手が簡単に訴訟準備に入れるようになる。相手に一定の正当性があり、訴訟を起こされるかもしれず、そうすると長引いて面倒なことになると考えていたから回避を試みたのでは?

そこまで勘ぐるのは行き過ぎかもしれない。しかしそう勘ぐられることを考慮して特段の事情を事前説明していなかったこと、実際に(この他にも多数の疑惑について)勘ぐられたコメントが付いた後に一切の反論をせずに記事を消去したことなどから考えると、非常に怪しく思える。

なお、その後の文でサークル自身がDMCAの抗議システムを解説しているため、その仕組を知らなかったとの言い訳は難しい。当時知らずに初動を間違えたのであれば、普通はその旨釈明するだろう。

ちなみにうろ覚えなのであまり自信がないが、DMCA通知による消去の回避行為はDMCA違反で違法だったはずだ。そもそもサークル主は中国系の人のようなので関係ないかもしれない。

DMCAの解説が続く

しかしこの法律は悪名高い、いつも悪用されています
その原因は申告の仕組みにあります
最初に申告通知を提出する側は圧倒的に有利です
申請を提出するために必要な証拠、個人情報はいくらでも偽造できる
インターネットサービスプロバイダー側は申請内容の真偽を確認する義務がありません
お手軽でどこの誰でもDMCA申告できます

多くの場合、申告があるだけで作品は問答無用に削除される
それとこの申告の内容は被害者側には開示されません
なので未だ私は相手の事に関してあまり知りませんです
実際の本名、電話番号、住所及び提出した証拠、申告の情報は一切所有していません

間違いではないが、被害者側に開示されないというのはちょっと疑問。確かに法律上は消去したことを通知するだけで良いのだが、実際には通知者の本名(あるいは代理人である弁護士の名前)と本文(証拠等)、抗議が可能なことを伝達する所も多い。何ならGoogleやYoutube、Twitterなどでは住所と電話番号を隠した上で通知内容を全世界に一般公開している。

この悪質な申告に対抗できる唯一の方法は反対通知です
(図)
この図の5番目の所
私の個人情報を提供して相手の申告を反対によって再び商品の取り扱いを回復する
相手側は訴訟を提起しない限り、最初の申告は無効にされる……そのはずだが

ここでDMCA通知の流れを図説していたが、これは他社が制作した図の無断転載である。お里が知れますね。

反対通知の存在を知っているのに、なぜ最初にやらなかったのかの説明はない。

またDLsiteの説明もDMCAに言及しておらず、単に権利関係が不明瞭なため取り扱い拒否と記載されている。記事BにもいくつかDLsiteの発言スクショが載っていたが、DMCAに言及したものはなかった。

DLsiteがDMCA反対通知を拒否したとの文

DLsiteは私の反対申告を受け入れません
権利関係に問題のある作品は取り扱えないとの一点張りです
もちろん作品を取り扱い最終決定権はDLsiteにあります
例え問題がなくても作品申請を通るのか通らないのかは全てDLsiteの権利です
簡単に言うとめんどくさいことは関わりたくないです

なので現在は完全に詰みました
DMCA悪用の唯一の対抗方法も拒否された今
私に残された選択は弁護士を雇ってDLsiteに情報開示を要請して
後は個人的に相手を訴える
またはこのまま何もせずに負けを認める

あたかも反対通知を受け入れる義務があるのに従わなかったかのような書き方だが、そもそも日本企業がDMCAに従っているというのはサークル主が勝手に主張しているだけで、別にDLsiteは従う義務がないので受け入れなくても全く問題ないのである。これは印象操作と言うほか無いだろう。

反対通知を受理するのであればそれをそのまま最初の通知者に転送する必要があるが、この時住所氏名を含むため、日本企業はDMCAに従うことが出来ないような気がする。個人情報周りは詳しくないので断言できないが。最初の通知=自社が受け取った問い合わせ内容を勝手に転送すること自体、日本では出来ないのではないだろうか。もちろん事前に同意を取っていれば別だが、DLsiteの問い合わせフォームにそのような特記事項は見当たらない。DMCAに対応してないのだから当然だ。

DLsiteの規約として

サークルは登録しようとする作品につき、著作権、隣接権、肖像権、工業権その他各種権利を侵害する恐れのないものであることを保証します。これらの第三者が権利を保有するデータが含まれていた事が発覚した場合および公序良俗違反の警告、訴訟の提起などがあった場合、サークルは該当当事者双方で解決するものとし、DLsiteには一切の責任はないものとします

という項目があるため、これに基づいて掲載拒否されたと思われる。そもそもDMCAは関係ないのだ。

通常の著者証明をしていない疑惑

通常であれば、制作過程のツイートであったり、レイヤ分けされたファイルであったりを提出して、自身が著者本人であることを証明すれば疑惑が晴れて掲載復活となる。

そもそもDMCAと違って通知即消去な制度ではないため、単なる虚偽通知はDLsite側で却下されることも多いはずだ。幸いにして筆者はDLsiteでそのような通達を受けたことがないので実際のところは分からないが。

しかしこのサークルはそういった主張をした形跡がない。記事やツイッターからは分かる範囲では、「DMCAに基づく反対通知」と「後述の外部掲示板の書き込み転送」しかしていないのだ。もちろん書き忘れただけな可能性はあるが、「書き忘れてるんだったら追記して欲しい」や「こうしたら対応してくれるかも」といったコメントは無視された。

仮にこの2点しかやっていないのであれば、日本企業であるDLsiteは当然に却下するだろう。サークル主の日本語がだいぶ怪しく、意思疎通が正しく行われたか疑問なのもあり、当初は「DMCAと思い込むがゆえのすれ違いで出品拒否されたのだろう」と考えていた。

後に判明した内容も考慮すると、おそらくもはや作者証明でどうにかなる段階ではなく、この件を説明するとボロが出る故に隠した可能性もあるかもしれない。

残りの部分

しかしどちらにせよ私はこうする時間もお金もないです
それに今後もDLsiteで活動する私はDLsiteに対して盾を突くことはできるわけがない
今後も作品の取り扱いを拒否される可能性はないと言えない
もし私の作品は数万本も売れたらきっとDLsiteの対応も違うだろう
残念ながら私はただ一人の弱小の駆け出しクリエイター
今回の件についてもうこれ以上何もできない

作品の収入は私の唯一の収入です
収入をなくした今、私の生活に大きな影響が出ています
そして今後も同じような事が発生する可能性もある
私は精神的にも経済的にもとてもまずい状況になっています

現在開発しているゲーム「魔力依存症 魔王ちゃんとの生活」も発売時に同じ攻撃をされるではないか?
そもそもこの件によって今後DLsiteはまた私の作品を取り扱えるのか?
すでに邪魔者扱いされるかもしれない

自分が一生懸命で作った作品がこうやすやすに奪われるなんて…
生活すらできないほどの悪質な攻撃を簡単に通せる現状…
本当に残念です、創作を諦める考えもありました
正直にこれからはどうすればいいのか全くわかりませんです
ただただ悲しくて、このように説明するだけでも精一杯です

長文申し訳ございませんでした
いつも支援している皆さんには本当に感謝しています

これ自体は当たり障りない内容ではあるのだが、相手方の主張を読んでから再読すると盗人猛々しい被害者ムーブであることがわかる。こんな記事を公開するくらいならさっさと筆を折ったほうが良い。非常に好意的に解釈して仮に悪意がなかったとしても、ディレクタとして致命的なほど筆力が低いことになる。

私は百件くらいしかDLsiteで売れてないが、別に小規模サークルだからと言って不当な扱いを受けた記憶はない。サポートに問い合わせたときも普通に誠実な対応が返ってきた。累計数万販売のサークルに属していたこともあり、かと言って対応が変わったようにも感じなかった。もちろん偶然トラブルに遭遇してないからかもしれないが、印象操作で貶めるのはどうかと思うのだ。

記事B さよなら、冬花ちゃん

https://ci-en.dlsite.com/creator/6468/article/869929
で公開されていたのだが、現在消去済みで確認できない。そのため記憶と、外部SNS等に転載されたスクショ等を頼りに書く。原文を持っている人がいたら提供して欲しい。

冬花ちゃん「頑張って作ったゲームを販売するそう!皆様の応援ありがとう!」
謎の人物「お前のゲーム…俺のものじゃなくね?販売禁止だよ禁止」
DLsite「両方の主張は判断できないので販売停止」
冬花ちゃん「どうして販売停止したの?誰?何の証拠があるの?」
DLsite 「個人情報なのでお伝えことができません」
冬花ちゃん 「じゃあどうしろって言うの?」
DLsite 「申告者がゲームの制作に関わっていない証拠を提供してください」
冬花ちゃん 「???」
冬花ちゃん 「あ、申告者のメールアドレス… 海外の大手海賊版サイトと同じ名前
の人がいる」
冬花ちゃん「しかもitchでも他のクリエイターに対して同じ方法で失敗した」
冬花ちゃん「よし、証拠として提出する!これで運営さんもきっとを判断できる」
DLsite「判断できないです、弁護士や警察に当たってください、ちなみに個人資料は提供できません」
冬花ちゃん「……」

冬花は問題となっているゲーム”ボトルバイオスフィア ~家出少女との生活~”のヒロインで、要するに声優の盾ならぬキャラの盾を発動し代弁させているということ。

途中の画像を略してまず文を抜き出したが、突っ込みどころが多々あるので順番に書いていく。

攻撃者は元サークルメンバー

サークルは「謎の人物がDMAC通知をしてきて販売停止された」と主張しているが、謎の人物ではなく既知の人物である。

このゲームは開発開始時にクラファンを行っており、そのページでプログラマ兼デザイナとして名前が出ているKia Azad氏を検索すると、10年前から使用しているアカウントが見つかり、またGithubではサークル側が掲載した”大手海賊版サイト(F95zone)”のスクショと同じアイコンを使用していることがわかる。

更にこの人物は5年前にRenpy(ゲーム制作ツール)の習作を投稿しており、Patreonでは頻繁にコード片を公開している。本作もRenpyによって作られていることがデモ版からわかるので、プログラマ本人と考えてまず間違いないだろう。

従ってF95に投稿しているのは「見知ったプログラマ本人」あるいは「そのなりすまし」であり、「謎の人物」という表現は明らかにサークル側が何かを隠していることを示している。なりすましならそう説明しない理由がないので、状況から見て本人である可能性が高いだろう。

冬花ちゃん 「あ、申告者のメールアドレス… 海外の大手海賊版サイトと同じ名前
の人がいる」

と、あたかも初見であるかのような表記が白々しい。メアドを見た瞬間にわかっていたはずだ。

海賊版スレにいる=悪ではない

元サイトはこちらで確認できる。

F95zoneは、確かに海賊版の共有に使われているサイトではあるのだが、単純な海賊版配布サイトとも言い難い。成人向けゲーム専門5chのような場でもあり、ファン同士の交流があったり、modが公開されたり(日本だと無断modは違法だがアメリカではそうとは限らない)、時には製作者自身が投稿していることもある場なのだ。

実際に過去1年の80投稿を遡ってみると、Kia氏は特定ゲームの海賊版スレに顔を出したことはなく、開発者同士の交流スレか自作ゲームのスレへの書き込みしかない。本作の海賊版スレに書き込んだのもトラブル告発のために限られる。また、これは4年間使用し続けているアカウントであり、このアカウント経由で請け負った仕事も複数あるようで、虚偽報告のために使い潰すとは考えにくい。こちらのKia氏もRenpyについての投稿が多い。

 

さて、そんな場でKai氏が何を発言したかというと、スクショに写っている部分では
「(無修正版公開してくれない?に対して)無修正版ファイルは持ってるけど、このゲームのために働くのは時間の無駄だ」
「もうこのゲームに貢献しないようにしてるけど、偶然ファイルを見つけたらどっかに放流するかも。もしあの詐欺師を倒したいなら、彼に注意を向けるのをやめて他に行くと良い。ちゃんと作られた、時間をかける価値のあるゲームはたくさんある」
という発言をしている。どう考えても海賊版の共有をしに来た一般ユーザーとしての発言ではない。

なぜこんなあからさまな発言を記事に含めたかは不思議だが、「どうせ日本人は英語読まないから騙されるだろう」とでも侮ったのではないだろうか。ちなみに中国の掲示板でもこの記事が話題になっていたが、プログラマの主張が転記されて即話題終了になっていた。ちゃんと英語読んでて偉い。

少なくともDLsiteの職員はこのサイト内の発言を真面目に読んだと期待するし、そうなれば当然掲載拒否の方向へ動くだろう。

Kia氏の主張

Kia氏の主張をまとめる。

(Discordスクショ訳)
「そういや新作作ってるみたいだけど、ボトルバイオスフィアは公開されたの?」
「伝えるの忘れてた! ここだよ」
「私の投資が大きくなっていることを祈る」
「かなりいい感じ」
「私の取り分を別にしても? 私の報酬の一部を貸しにして、絵や声に使わせて後で貰う約束だったよね」
「うん、1200ドル(約17万円)で約束したと思う」
「その額だったね」
「でもまだ1円も貰ってないんだ。この会社が販売代行してるんだよ」

(上記の2ヶ月後)
「ゲームが売れてるみたいだから、そろそろ1200ドル払ってくれない?」
(5日経過)
「借金払うの? 払わないの?」(送信失敗)
『メッセージを送信できませんでした。このエラーの原因として多いのは、受信者とサーバーを共有していないこと、または受信者がフレンドのみからメッセージを受信するよう設定していることなどです。その他、原因の一覧をこちらでご確認いただけます:https://support.discord.com/hc/ja/articles/360060145013』

要するにフレンドだったのを意図的に解除して逃げたか、開発用Discordサバに属していたのであればそこからの追放も行われた可能性が高いということだ。

その他の主張
・ゲームを完成させるのにお金が足りないと言うから、自分の報酬の半分を後払いで良いという契約にしてあげた。
・お金には余裕があったので1年何も言わずに待ったが、彼が逃げたのがきっかけ。※プログラム完成から販売まで1年の意か、逃亡から1年は本格的な法的措置を起こさないで待ったの意? クラファン及びCi-en開始が20年6月、販売が22年4月、逃亡が22年6月、DMCAが22年12月、書き込みが23年5月。
・彼は金のために人々を騙しているだけで、完成品を作り上げたことがない。私から盗んだプログラムで作れたのは混沌とした品だけだった。※本作は開発中表記がある部分を残したまま更新が放棄されており、いくつかのバグも修正されず残っているらしい。サークルは新作の開発に移行済み。
・正直お金はあまり気にしてない。盗まれたプログラムを使ったまま各所で販売されているのが嫌。海賊版が配布されてお金を使う人が減って嬉しい。
・私は彼を契約違反で訴えているだけ(※まだ実際の法的措置には入っておらず暴露のことっぽい?)。盗んだプログラムをゲームに使用したのは彼の問題だ。
・私は証拠を集金サービスに渡し、訴訟して回収してもらうつもりだ。
・お金というよりは最低の詐欺師を罰することが望みで、暴露はそのついで。

Kia氏の主張は本当なのか

スクリーンショットはあるものの、こんなものは簡単に偽造できるため正直言って証拠能力はないに等しい。とは言えこの主張をサークルが知っているのであれば、そしてこれが不当な要求なのであれば、それに反論しないのは異様なことだ。

サークルが主張するように、本当にこの主張を知らなかったのなら仕方ないことだが、サークル側が掲載したスクショのわずか5行下にはこの内容が書かれていたのである。読んだ上でマシな部分だけ切り抜いたように思えてならない。プログラマと同じ名前を使う人が自作の海賊版スレッドで何を話していたか、すぐ目につくところにあるのに読みに行かないなんてことがあるだろうか?

そもそもサークルはメアドのローカル部(@の前)で検索したらF95がヒットしたと言っているが、実際にGoogleで試すとそのような結果にはならない。”Bottle Biosphere Kia Azad”で検索するとプログラマとして掲載されたサークルの正式なページだけがヒットするし、単に”Kia Azad”で検索してもF95が出てくることはない。”Bottle Biosphere F95″で検索してやっと出てきた。もしかしたらマイナーな検索エンジンでは出てくるのかもしれないが、そうだとしても上位にサークルページが出てきて思い出しそうなものだ。

これらの状況から見て、サークルが意図的に情報を隠蔽している可能性は非常に高く、同時にKia氏が本当のことを言っている可能性は高いと思われる。

別の人に同様の攻撃をして失敗した?

これはitchでのやり取り。訳すとこうなる。
「私が作ったファイルが無断で同梱されているので消去してくれ。代わりにlemma-softフォーラムか私のitchパックへのリンクを含めても良いが、実ファイルを入れることは出来ない」
「このフォーラム投稿を忘れたのか? https://lemmasoft.renai.us/forums/viewtopic.php?f=52&t=37628#p407985」※「ライセンスはすべての用途においてCCフリーでクレジット不要」との宣言。要はCC0であると言ってる。この発言の3日後に編集して再梱包禁止を追記。
「無料公開したものなので、PWYW(0円を含む任意の金額で購入する方式)とはいえ他人が転売するのは好ましくない。クリエイターとして私はいつでもライセンスを変更できるが、普通の人は私の要求を尊重してくれる」
「新しいライセンスで新しいものを投稿することは出来るよ、でも……https://creativecommonsusa.org/index.php/ufaqs/am-i-allowed-to-take-down-my-work-and-remove-the-cc-license/」※一度発行したライセンスを後から変更することは出来ない旨の解説ページ
「あなたがいうこのCCライセンスのコピーを私から受け取ったのか? 私はっ自分の作品にライセンスを含めたことがないのでCCには基づいてない。著作権は私が持っているが、それを搾取しようとするあなたにはうんざりだ。これが最後の消去要請だと考えてください。次の連絡は法的手段になります」

確かにKiaはCCの具体的条文へのリンクを張っていたわけではない。しかしクリエイターであればCCの概念を知らないことは考えにくく、”for license: they are cc free for all uses no credits required.”と記載した時、CC0以外を想起するのは不可能ではないだろうか。そのため個人的にはKiaが無理筋な要求をしていると思う。これは著作権における撤回権の話にもなり、国の差もあってややこしいのでここでは深掘りしないでおく。日本だと撤回権はない。

ともかく一見無理筋に見える要求をして、突っぱねられ、1ヶ月経過した現時点においてはitchは掲載を続けている。他の書き込みで、itchのサポートにこの件を相談して拒否されたらしいことも観測できた。

で、まぁ法的には無理筋に思えるのだが、感情的にはわからんでもない。

少なくとも一般的な虚偽DMCA攻撃とは全くの別物と言えるし、ボトルバイオスフィアに対して主張されている内容とも全く違う。サークル側の「他のクリエイターに対して同じ方法で失敗した」という主張は悪質な印象操作であると言う他ない。

DLsiteは判断可能だったのか

冬花ちゃん「よし、証拠として提出する!これで運営さんもきっとを判断できる」
DLsite「判断できないです、弁護士や警察に当たってください、ちなみに個人資料は提供できません」
冬花ちゃん「……」

DLsiteの立場になって考えてみて欲しい。

「怪しい外部掲示板に書き込みをしているから虚偽申請に違いない!」と送られてきた時、その相手がなりすましであったり、偶然のハンドルネーム一致である可能性を考慮しなければならない。DLsiteはその掲示板ユーザーがDMCA通知を送ってきた相手と同一であるか判断する証拠を持っていない。これだけでも十分に却下理由になるだろう。

しかもその相手の主張を読むと、報酬未払いでプログラムを盗用されていると主張している上、相手は5年単位で開発者としての活動実績があるアカウントなのだ。ただの捨て垢でないことは明白である。復活申請を却下して司法判断を待つのが当然である。

サークルは打つ手がなかったのか

サークルは「弁護士を雇うお金もないし、もう何をやっても無駄だから諦める」と主張しているが、そんなことはない。色々と現状でも出来る策を提案されているのに、すべてを無視しているのだ。

覚えてる限りでは例えば
・github(プログラムのバージョン管理サイト)のログ提出による本人証明
・ラフ画像や改変版ソフト、開発ブログの提出による本人証明
・クラファンによる資金調達
※本作の開発資金として110万円、次回作で150万円を集めた実績がある
といった提案が出ていた。

2番目については相手の主張がプログラム盗用なので意味がなかっただろう。サークルがそれを隠したためファンが誤った提案をしてしまった。1番目は十分現実的に思えるが、まぁ個人開発ではgithub不使用な場合もあるので絶対可能とはいえない。もちろんプログラマと良好な関係を築けていることが前提だ。3番目は十分現実的に思えるが採用されなかった。自分に正義がないことをわかっていたのではないだろうか。

そもそもそんなことをせずとも、各所のKiaアカウントにて「F95のKiaは名前が同じだけの別人だ」と主張してもらえばDLsiteも動いたかもしれないのだ。それをやらない時点で、少なくとも何かしらの不和が生まれていて依頼できず、またそれをサークルが公表できない、サークル側にも汚点が存在する状況である可能性が非常に高いと思われる。

参考までに、サークル側が提出した画像によれば本作は定価2750円、販売5274本であり、この値段のDLsiteマージン率は24%なので1100万円がサークルの収益となる。実際にはセール中に売れた分もあってDLsiteだけ見ればもういくらか低いだろうし、他にも様々なサイトで販売しているため総合的にはもっと高くなるはずだ。少なくとも1000万円を下回ることはないだろう。そこから各スタッフへの報酬を払うことになるが、具体的金額は不明だ。クラファンページによればストーリー構想以外、具体的なライティング含め全外注なのであんまり手元に残ってなさそう。

DLsiteだけが不当に復活しなかったのか?

元々今週は魔王ちゃんの更新をしたいんですけど、今はさすがに精神的にやられている…
運営さんからはもうはっきりこれ以上受け答えはしませんと言われたし
もうボトルバイオスフィアの販売復活は不可能
自分は何もできなくて本当に悲しいです
弁護士の相談や費用に探したが、決して安いものではありませんでした
現実的に計算するとたとえ大金を使って販売を復活してもこれ以上の売り上げはできるんでしょうか?
そもそも弁護士を雇っても運営は必ず販売を復活する約束にもないし

一方的に販売中止を追い込める現状に恐ろしさを感じました
運営さんの対応にも本当に失望しました
今までメールの返信は早くても2、3日かかる、遅い時は一週間以上かかる
返信する担当者もコロコロ変わる、5人くらい変わった
変わらないのは同じ文面の「判断できない警察弁護士にあたってください」

今もまだ魔王ちゃんのDLsite発売予告ページを作っていない原因
それはこの件のせいです
魔王ちゃんをDLsiteで発売することを迷っています
また同じこと起きるではないかと心配している
Steamとitchのページは既に作っています
私が今活動しているところ(itch, kickstarter, subscribestar, twitter…)の中、全部同じ人から著作権侵害の申告を受けました
ただ当たり前のように各々の運営は全部却下しました、DLsite以外

itch, kickstarter, subscribestar, twitter 全てアメリカの企業であり、DMCAの制約を受ける。これらは反対通知を受け取れば当然に受理するし、相手が10日以内に訴訟を開始しなければ自動的に投稿が復活する。法律通りに当たり前の運用をしただけだ。厳密には運営側は違法だと信ずるに足る証拠があれば復活しなくても良いのだが、そこまで個別事情を読み込んで対応してくれることは少ない。

一方でDLsiteはDMCAに従っていないので、自動消去システムがない代わりに自動復活システムもない。この件に関して「DLsiteだけ復活しないなんてひどい!見損なった!」と発言している人も多く見られるが、独自に判断して動くために他のサービスと違う結果になっただけなのだ。

DLsiteに攻撃したくない?

今回はこの件について最後の説明です
もうこれ以上この件に時間を費やしたくないです
もう負けを認めます
魔王ちゃんが発売する時、何かの形式で前作を無料配信する

前も他の所に移籍するコメントが多いです
でも私みたいな1作しか実際出ていない弱小サークル
3年もかけてぼちぼちここで4500フォロワーまで頑張ってきた
今から他のところで0からやり直すのはさすがにリスクが高すぎる…

少なくとも今すぐにはできない

今後も魔王ちゃんの開発更新をここに続けます、DLsiteの活動も続ける
この件を持ってDLsiteに対して反発しても、今後一切ゲーム販売させられなくなるかもしれないので
私はDLsiteに対して攻撃したいではありません、ただ前作を購入した人そして私に支援してくれた人たちに説明したいだけです
皆様もどうかご理解してください

攻撃したくないと言いながら、このサークルはDLsiteがDMCAに従うべきなのに無視しているかのように書いたり、他の(他国の)会社は対応してくれたのにDLsiteだけ対応されないと書いたり、歪んだ情報を活用した印象操作が多い。どう見てもDLsiteの名誉を毀損しており、これで攻撃じゃないと言い張るのは無理があるだろう。

好意的に解釈するとすれば、本当に攻撃をするつもりはなく、詳しい事情を伏せて被害者ムーブしようとしたら結果的に罪をなすりつけてしまっただけという可能性はあるのかもしれない。どこかに悪役は存在しないと説明がつかないのだから、自分が悪くないことにすれば当然取引先であるDLsiteが悪いことになってしまう。

記事C 追記:販売中止について

記事ABがバズり、詳細情報を求めたり、記事へのツッコミを入れるコメントが付き出した翌日、ABを消去するとともにCが公開された。これは今でも閲覧できる。
https://ci-en.dlsite.com/creator/6468/article/870481

元々は前作を購入した人達とフォロワーに向けて販売中止のことを説明したい目的で書いた記事です
でもDLsiteへ攻撃的な解釈と捉える人があるかもしれない、変な騒ぎを起こしたくないだから記事を削除させて頂きました
説明の目的はもう達成していると思うので
今後の活動のためにこの件は自分的にもこれでおしまいとさせていただきます
大量なコメントに返事できなくて申し訳ございませんでした
その中たくさんの応援と温かい言葉には本当に感謝しています

今後は是非「魔力依存症 魔王ちゃんとの生活」を応援してもらえると幸いです

宣伝タイム
________
(以下略)

「攻撃と解釈されてしまうかも」と言いつつ、記事ABによって行われたDLsiteへの印象操作を撤回する補足情報の一つもないのである。コメントを含めた全文消去といい、あまりに不誠実な対応だ。

本当のことが掘り返されそうになったから慌てて火消ししたようにしか思えない。

 

おまけのツイート

他者ソースコードがないことの証明

消去済みだが各所に引用が残っていた。
https://twitter.com/kumonosugame/status/1657019297451978755
自分のゲームが自分で製作した証拠を提出しろと言われても…
他人のソースコードがない事ってどう証明するのだよ…
発売中止されたし…
知らない間にベトナム版出ているし…
なんかAndroid 版も出てるし…
もうdlsiteの活動中止するか
「他者のソースコードがない事」のような悪魔の証明を求めるなんて本当ならひどいな、と当初感じたが、経緯を見ればそうなるのは当然である。DLsite視点だとどちらが正しいか判断不能なので、司法に任せる以外の道は基本的にないのだろう。Githubのログ提出でもできればまた違う結果になったのかもしれない。絵なら制作過程のツイートをするなり、第三者が保管するログの提出はトラブル時に非常に有効である。

AIより人間が怖い

私はDMCA通知してきた人より蜘蛛の巣ゲーム代表氏のほうがよっぽど怖いよ。向こうの言ってることは筋通ってるけど、蜘蛛の巣ゲームがやってるのは明らかになにか隠してる悪意に寄るものだからね。

まぁ現状のAIに自発的創作意欲はなく、人間の指示に従って動くだけなので、元々AIによる騒動(i2i丸パクとか絵を差し替えただけのパクリゲー販売とか)も人間の悪意が全部やってるんだけど。そもそも人間しか絵を描かない時代にも同様のトラブルはあったしね。

コメント

  1. 匿名 より:

    togetterまとめが削除されてたし、この記事は貴重だね。すごくわかりやすいし。
    多くの人が誤解したままだと思うけど 無かった事にはしてはいけないよ

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